生命保険金を遺留分侵害額算定の基礎財産に加えて解決した事例
日比谷ステーション法律事務所にご相談いただいた遺留分侵害額請求の解決事例についてご紹介します。
遺留分侵害額請求の解決事例の概要
案件概要
トラブルの内容 | 遺留分侵害額請求(請求する側) |
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解決方法 | 調停 |
解決までの期間 | 1年2ヶ月 |
財産の内容 | 現預金:3千万円 不動産:8千万円(時価) 株式等:1千万円 |
遺留分侵害額請求トラブルの内容
被相続人である母が、同居していた長男に全ての遺産を相続させる旨の公正証書遺言を作成していたというケース。
本件では、原則として遺留分侵害額算定の基礎財産とならないみなし相続財産として、受取人を長男とする生命保険金がありましたが、その金額は6000万円と多額なものでした。
そこで、これを基礎財産に加えるかどうかが主な争点となりました。
相手方の主張・対応
先方は遺留分侵害額を抑えるため、原則どおりみなし相続財産である生命保険金は基礎財産とならない旨主張しました。
日比谷ステーション法律事務所の対応・主張
弊事務所の対応としては、みなし相続財産を例外的に遺産に含めるとした判例を援用し、本来的な遺産の額に対する生命保険金の額の比率が大きいことを主張し、本件でも遺留分侵害額算定の基礎財産に含めるべきと主張しました。
解決のポイント(弁護士による解説)
生命保険金は遺留分侵害額算定の基礎財産に含まれるか
相続税申告に際しては、相続人を受取人とする生命保険金もみなし相続財産として、相続税の課税対象としての遺産に含まれることになりますが、遺産分割や遺留分侵害額請求では、原則として遺産とは扱われません。
しかしながら、遺産分割のケースで、要旨、本来的な遺産との比較して、一部の相続人を受取人とする生命保険金の額が大きく不公平が著しい場合には、特別受益と同様に遺産に持ち戻されるとした判例があります。不公平が著しいかどうかは、諸事情が勘案されるものの、本来的な遺産と生命保険金の額の比率が主な基準となり、これが50%を超える場合には、遺産への持戻しが肯定される可能性が高いといえます。
この判例は、遺留分侵害額請求のケースにも妥当するとされているため、本件でもこれを援用し、結論としては当方の主張どおりの計算にて調停が成立しました。
不動産の評価も争点ではあったが・・・
本件では、不動産の評価も争点であり、遺留分侵害額を請求する方は評価額を高く、請求される方は逆に評価額を低く主張するのが通常です。
ところが、本件では、上記のように生命保険金が基礎財産に含まれるかが争点となっており、不動産の評価額が高くなると、遺産に対する生命保険金の額の比率が小さくなるため、請求される側にとって有利になるという逆転現象が起こりました。
このことから、当方としては、不動産の評価額を先方の主張どおり認めることとし、結果として生命保険金を基礎財産に含めた上で早期解決を実現することができました。
申立てのタイミング
本件では、依頼前に依頼者が相手方の弁護士と半年以上交渉していましたが、上記のように生命保険金の扱い及び不動産の評価額を巡る争いで根本的な見解の相違が見たれたため、協議での解決は難しいと判断し、依頼後直ちに調停申立てをしました。
遺留分侵害額を請求する方へ
遺言等の資料を検討し,誰にどのような請求をするか,最適な解決方針を初回法律相談時にご提案いたしますので、お気軽にご相談下さい。 03-5293-1775